の続き。

鏑木毅(かぶらき つよし)選手が、2008年のツールドモンブランへ、2007年に続き二度目の参戦されて、2007年の12位も大健闘、今年2008年は23時間10分47秒 4位という素晴らしい記録で日本人初入賞されたのだ。

入賞が素晴らしいのは勿論だが、鏑木選手は1968年生まれ40歳である。 彼は、トレイルランニングに興味を持つ人なら誰でも知っているトップランナーの一人。富士登山競争、ハセツネ等、国内の有名なトレイルラン大会は優勝、連覇を果たしており、今現在も常に優勝・上位入賞という成績を維持されており、今年は特にロングレースに注力されている。

詳細は、『トレイルランナー 鏑木毅』を読めば良いし、だいたいの流れはTarzan No.523を見れば分かる。Tarzanにも書かれているが、これまで多くの日本人トレイルランナーのトップランナーがツールドモンブランに挑戦して来たが、全身痙攣、激しい筋肉疲労による途中昏睡、途中棄権といった事態になってしまって来たのだった。

国内のトレイルラン大会、50kmとか、70kmとか100kmとか有るが、彼らは国内のこの様なレースでは、平均時速10km/Hr超で登りも下りも駆け抜ける。ロードのマラソンからすると、半分では無いかと思われるかも知れないが、私の様に初心者の場合では、きつい登りは時速3km/Hrとか歩いているのと変わらない速度でしか進めない様な急坂でも、距離に応じてかれらは私の様な普通の人の2倍〜3倍の速度で走り続ける心肺能力と脚力が有る。そして、


ツールドモンブランという大会は、モンブランの周りをぐるりと一周する166km、累積標高差8900m、大きな登りが10箇所もあると言う、人間離れしたコース。登りも下りも含めて、平均時速7km/Hr超で、166kmの山を駆け抜けた事になる。


私の様な初心者では、30kmもやっと、50kmの大会では疲労困憊し1ヶ月ぐらはダメージを引きずってしまっていた。この大会の様な大きな登りに出くわして、真面目に走ってしまう努力を試みたとしたら、自分など一つの登りだけで足がいってしまい(全部痙攣したり、靭帯が痛くなったり)それ以上進めなくなるような状況と思われる。

鏑木選手自身、2007年は腸頚靭帯炎が酷くなって車椅子での帰国・数ヶ月治療に専念となったという。今年2008年は、4位入賞、その晩からシャモニーの町で盛り上がっていたとのこと。逆に、興奮が冷め遣らない感じで、寝付けなかったという。


報告会自体は、淡々と進められた。誰かがそのうち書いてくれるか、何かの記事になればと思う。
ここで書くのは、自分が特筆と感じたコメント、質疑についてだけにする。


質疑の中で、どうやって山に、高地に強くなるトレーニングをすれば良いのかという議論があった。

そこでは、1000mとか、あまり高くない山からトレーニングをはじめて徐々に高度を上げていく様なトレーニングがベターと述べられていた。

高地で強くなるためには、高地でトレーニングするしかないとの事で、鏑木選手自身は人には勧められないが自分を追い込む様なトレーニングを繰り返されていたとのこと。その一つに、富士山3776mに登って、そのお鉢周り20周ラン(なにぃ!!!)というトレーニングを科していたと言う! 富士山は、自分の様な登山初心者は経験すら無いが、高地に慣れない人が上ると高山病にかかったりする筈の、そこに登っていくだけで普通は精一杯の、その山の上に走って登った上でお鉢周り20周ランとは、まぁ、何とも激しい。いくら、富士登山競争3回も優勝されているとは言え、どんだけ真剣に強くなりたいと強く決意されていたかが伺われる。

ご本人は、話している雰囲気は、ソフトなふわっとした雰囲気しか見えないが、内に秘めた情熱は凄まじいものが有る方なのでしょう。


質疑の最後の方で、靴に関する質疑が有った。凱旋報告のスライドの資料でも、Tarzanに載ってる写真でもそうだが、鏑木選手は今回の大会でもロードランニング用の、ミズノの靴ランバード※ を履いて参戦されている。ツールドモンブランは、ガレ場メインの岩山のコースというよりは、トレッキングの硬く踏み固められたコースがメインだったため、他の靴(多分ラッキーチャッキー)も持参したがロードの靴で通したとの事。具体的にどのポイントという事は述べられなかったが、確かに厳しいトレイルはトレイルラングシューズの方が足への負担は軽いだろうが、自分が望むレベルのトレイルランニングシューズが存在しないと、それはNorthFaceの開発側の方にも言いたいという事を明確に語っていただいた。

 ※中学生の時に、まだランバードというブランド名の靴だった時に、一度だけ買って履いた事が有るが、その初期の製品は劣悪で、買った生徒はみんなアキレス腱付近の皮膚に豆が出来たり、皮が剥けたり酷い物だったためその後私は一度も買っていなかった。その後、どうやらアシックスの靴開発のチームがゴッソリミズノに移って、靴のレベルが上がったという話を聞いた事があった。。。(だったよな?)


それから、あの、神とまで称されてしまう、60歳マルコ・オルモ選手の走りについて。トレイルランナー鏑木毅でも書かれていたが、実際マルコ選手の動きをトレースしつつ、どの様に自分の走りに取り入れ、実際どういう動きなのか見せて欲しいという急な要望に対しても応えてくれた。どうも、マルコ選手の動きは、片方の腕の肘辺りを、後ろでもう一方の手で抱えて、地面を蹴るでは無く、体の体重移動を先行させて前に進む様なイメージの様。日本のトレイルランナーの選手の様に、ガシガシ足で地面を蹴って脚力で登っていく雰囲気では無く、そうではなく小船が揺られて行く様にすっと。。。それは、本にも書かれてはいた。会場には坂道がある訳では無いので、少し壇上でやって下さったが具体的には良く分からなかった。

具体的には、いまいち良く分からなかったが、とにかく重心移動を先行させて、足で蹴らずに進むという走り方は、まさに初動負荷理論のそれでは無いかと、本にサインを頂く時にも聞いたが、名言はされなかったが、どうもそれに近いようだ。『HOW TO トレイルランニング』にも初動負荷理論の事が書かれていたが、それに近い動きを活用した超効率的なランニングスタイルで有ることは間違い無さそう。(個人的な思い込みかも。。。)


体重移動だけに関して言えば、あまり定かでは無いが、手を後ろに組んで、重心移動先行とは、アイススケートとかの雰囲気の様にも思える。勿論アイススケートは、エッジを逆ハの字にして斜め外側後ろに蹴るのだろうが、ランニングの場合当然足は真直ぐか 初動負荷理論の様に外側を並行に揃え、腰・膝・足首の垂直軸を維持しつつ、膝を内側へ入れる様な動きになるのだろうか。


そのうち、鏑木選手のクリニックに参加する機会が有ったら教えて貰えると良いのだが。あるいは、2008ツールドモンブランのDVDが販売されたら、鏑木選手の走りが、最初と最後とでどの様に違っているのか、マルコオルモ選手の走りがどうなのかも見てみたいと思う。


それから、2008の優勝者の装備について、Web上に出ていた写真や雑誌の記事にも有ったが、今年の21歳の優勝者の人は、規定の装備を全コースを身に着けて移動するというルールを守らなかったらしい。規定の装備を持たずとも走り続けられるということは、本人が強いということだけでなく、沿道でのバックアップ体制が規定の装備なしでも済む体制をとっていたためでは無いかとの事。色々微妙なところも有るが、将来有望な若い選手との事で、今回はお咎め無しだった様だ。

報告会は、最後にNorthFaceのじゃんけんプレゼント大会で幕を閉じ、最後は急遽取り寄せた『トレイルランナー鏑木毅』の販売とサイン会となった。私は、以前から本は入手していたが、気付いたら50人ぐらい行列になっていたので、列に並んでサインを頂いた。サインの後握手してもらったが、若干暖かい、やらかい手だった。

私にとっては、わざわざそのためだけに東京まで行くだけの価値は十分に有る報告会参加だった。


来週は、久しぶりになってしまったが、いつものお気に入りの高原でトレランクリニックに参加、そして12月初めには京都で少し距離の短めのレースに参加、12月中には初動負荷理論の動きを習いに行く予定。来年の夏、秋には、今よりもう少し長めにトレイルを走り続けられる様になるため、そして、より快適なままの自分本来の体を維持し続けるために♪